- 2023.11.25
- 旅と旅情
- 開湯1300年と歴史の深い湯田川温泉は、古くは湯治場として2月から3月にかけて、多くのお客様がお出でになっていたそうな。 つかさや旅館の女将さんが嫁いできた40年ほど前も、まだ湯治文化は健在で、この季節は常時満室、20~30名程のお客様が泊まっていたそうだ。 毎年同じ湯治客らで賑わい、そうこうするうちにお客さん同士も仲良くなって、「また来年!」と言って帰ってゆく、そんな人と湯の温もりと活気に満ちた真冬の湯田川温泉が目に浮かぶ。 湯治の心得では7日間の逗留を一廻りとし、江戸中期の文献には二廻り(14日間)の逗留が良いとも記されている。 そのため、大抵のお客様は二廻り同じ宿に宿泊し、15日目にお帰りになるのだとお聞きした。 そうなると、食いしん坊の私が気になるのは食事事情! そうでなくても真冬は1年で最も食材の少ない季節。 日本海は連日大時化が続く。 にも関わらず、大勢のお客様を相手に朝に夕に食事を出すのは至難の業だ。 「当時は冷凍などの保存技術も今ほど発達してなかったからね。 山菜の塩漬けやぜんまいなどを乾燥させたもの、キノコの塩蔵もの、そうやって採れる時期に保存させたものを使ってね。 滞在中は同じ料理を出さないように、1つの食材でも酢の物にしたり、お浸しにしたり、和え物にしたり。 秋になると大根を何本も漬けてたくあん漬けを作ったり、秋鮭の粕漬けも一冬分漬け込んだりしていたよ」 と、女将さんが懐かしそうに語ってくれた。 湯田川名物の孟宗筍も、今では缶詰で保存できるが、当時は塩もみをして干して、また塩もみして…を繰り返して保存したものを、使う時には塩抜きをして油炒めなどに使っていたのだそうだ。 わらびの色出しから塩蔵の塩抜きなどは、先代の女将さんの教えで受け継いだ技。 秋鮭の粕漬けは、粕と砂糖と塩だけと至ってシンプルな味付けながら、ギュッと味の濃縮した、白いご飯もお酒も進む冬の「つかさや旅館」定番の味だ。 「あとは木賃(きちん)湯治と言って、お客さんが卵やら米やらを持ってきて、『茶碗蒸しにしてくれ』と言われれば茶碗蒸しにして、由良の魚の行商から魚を買って、『刺身にして』と言われれば、そのように調理してあげたりね。」 と、今は制度上見ることは出来なくなったが、湯治ならではの面白い食文化も聞かせてくれた。 なんと驚いたことに、はじめの2~3日は朝昼晩と昼食の賄いもしており、これが4~5日目となってくると、段々とお湯が効いてきて、あちこち痛くなってくるから食欲も減退し、そこを越えるとスッキリとしてお帰りになるのだそうだ。 お正月も、旅館業は繁忙期。宿で年を越すお客様も多くいらっしゃる。 クリスマスが過ぎると、お正月のご馳走づくりに女将さんは大忙しだ。 ≪つかさや旅館の正月ごっつぉ≫ ・はりはり大根 ・お煮しめ ・きんぴらごぼう ・昆布巻き ・ぜんまいの炒りもの ・煮豆 ・栗きんとん ・数の子 ・納豆汁 ・お雑煮 ある朝、若い女の子たちのグループが「わぁ、懐かし~‼」と朝食を食べる風景に遭遇し、なんとも心嬉しくなったという。 「郷土料理を受け継ぎ守っていくのも旅館の役割。」と晴れやかに言い切るつかさや旅館の女将さんの横で、「お母さんの料理は全部おいしい!」と話すのは埼玉から嫁いで10年になる若女将。 嫁いだ当初は全てが馴染みのない新しい料理だったというが、舌で覚えた“山形の味”は、着実に次の世代へと受け継がれている。 保存技術も流通も、凄まじい速度で時代は変われど、湯田川の宿屋の食事は、何か懐かしさを掻き立てられ、冬にこそ旅情を誘われる温もりがある。
- 2023.11.08
- 湯田川温泉『いい風呂の日』 温泉モニター募集
- 【モニター期間】 11月26日(日)〜11月29日(水)の4日間 「湯田川の温泉の良さを知っていただきたい」 この想いを元にいい風呂の日を記念して 旅館のお風呂で温泉を体験していただきます♨️ 日替わりで温泉を提供する旅館が変わります。 皆さんの応募をお待ちしております 【申込方法】 観光協会インスタグラムDM、またはyutagawakanko@gmail.comにて *お電話ではお受けできませんのでご了承ください。 11月25日まで 受け付けます お名前、希望日、希望時間帯、人数 連絡先を明記の上メールください 当選者には随時にご連絡差し上げます 【応募条件】 キャンペーン中入浴されたすべての方に温泉に関するアンケートにお答え頂きます。 【入浴注意時項】 1. 先着順で旅館の割り振りをさせていただきます。 2. 小タオルは進呈いたします(バスタオル利用時有料)。 3. 各組ご利用1時間とさせて頂きます。 利用可能時間は以下の通りになります。 《11月26日》 「対象施設」つかさや、理太夫、隼人 *定員に達しました。 《11月27日》 「対象施設」つかさや、理太夫、隼人 ①11時~12時 ②12時~13時 ③13時~14時× ④14時~15時× 《11月28日》 「対象施設」九兵衛、珠玉や、ますや ①12時~13時 ②13時~14時 ③14時~15時 ④15時~16時 《11月29日》 「対象施設」九兵衛、珠玉や、ますや ①11時~12時 ②12時~13時 ③13時~14時 ④14時~15時 この機会に是非湯田川の 旅館のお風呂をお楽しみくださいませ♨️😌 ===================== ようこそ湯田川温泉へ𓂃𐩲◍ 山形県鶴岡市 開湯1300年 あなたの旅をそっと支える 温泉地でありたい いいね!フォロー大歓迎! 皆様のお越しを心^_^なよりお待ちしております! Please follow @yutagawa_onsen ====================
- 2023.10.20
- 湯田川温泉神楽
- 「湯田川温泉神楽」は、湯田川温泉で永きに渡り親しまれてきた神楽で、その起源は定かではないが、盛んに演じられるようになって400年は経つといわれています。湯田川温泉の神様がまつられているという由豆佐売神社では、土用の丑の日にお湯が生まれ変わることを祝う「温泉清浄祭」が行われます。昔からこの日に湯治すると風邪をひかないといわれ、「丑湯治(うしとうじ)」とも呼ばれています。そして毎年、土用の丑の日とその前日の2日間、温泉街では湯田川温泉神楽が上演されます。 土用の丑を目前にした日の夜、湯田川温泉の奥にある湯田川温泉会館から、お囃子の音が聞こえてきました。コロナ禍においてずっと触れることのなかった懐かしいお祭りのお囃子。そのリズムに引き寄せられるように中に入ると若い人から幅広い年代の男衆が湯田川神楽の練習をしていました。その中心で音頭を取っているのは、湯田川温泉神楽保存会の会長の大井康博(72歳)さん。湯田川温泉神楽保存会は昭和30年に発足し、そのメンバーは現在20代から70代の25名で活動しています。メンバーは全てここ湯田川に住んでいて、親子で参加している人も4組います。 神楽の練習は基本的に月に一度。日中はそれぞれが仕事をしているので、練習が始まるのは、いつも夜の7時半頃からで12〜13人が集まります。かつては、2月に寒稽古を1週間していたこともあったとか。現在「湯田川神楽」の台本は、獅子舞、鳥刺し舞、吉原踊り、神楽囃子の4本。「とにかく愉快な神楽で、笑いが溢れるのはこの『湯田川温泉神楽』だけではないかな。昔は、温泉旅館を神楽がまわると、子供がずっとついてきたものだった」と大井さんはいいます。 「ちょんべ」と呼ばれる「ひょっとこ」を演じる村上光央さん(48歳)は28歳の頃から演じてきました。もの心ついた子供のころから湯田川神楽を楽しみにみてきたという村上さん、まさか自分が「ひょっとこ」を演じることになるとは思っていなかったそうです。それまで永きに演じてきた佐々木浩さんが高齢になり、大井さんにスカウトされたのです。やればやるほど、どんどん「ちょんべ」に自分自身が引き込まれていきました。「湯田川神楽はふざけたいやらしさ、邪道、品がないとかいわれることもあるが、一度みた人にはセンセーショナルで忘れられないはず」と村上さんはいいます。 三味線の伊藤俊一さん(45歳)も、やはり26歳の頃笛から神楽のメンバーに加わりました。今はまだ先輩である高橋吉和さんの姿をみながらその技を受け継いでいます。湯田川神楽のお囃子には実は楽譜がありません子供の頃から聞いてきているので、耳に音もリズムも残っているのだとか。 湯田川温泉入口の大提灯が灯る頃、頭に吉原かぶりの豆しぼり、腰に貝ノ口男結び、そして背中に大きく「湯田川」足元におかめとひょっとこの浴衣がなんとも粋な男衆が一人、二人と正面湯の前に集まってきました。一同は正面湯から由豆佐売神社へと向います。 由豆佐売神社に「湯田川温泉神楽」が神事として奉納されます。神主さんが見守る中、お囃子と共に凛とした獅子が舞います。そこにひょっとこの姿はありません。 神社での奉納の舞が終わると一行は、温泉会館に戻り陽が落ちるのを待ちます。夜8時になると正面湯の前には、どこからともなく、人が集まってきました。 獅子が豪快にそして凛として舞います。と、そのうち獅子が眠りにつくと、どこからともなくちょんべ(ひょっとこ)が現れます。そのふるまいは滑稽でその場の観客を一気に引き込みます。眠りから目覚めた獅子が豪快に舞観客のすぐ目の前にやってきます。笛、太鼓、しゃみせん、楽器同士の呼吸が獅子とひょっとこの舞を引き立てます。こんなにも楽しく、観客と一体となる神楽があるでしょうか。実は、このちょんべ(ひょっとこ)の悪ふざけは、災いを意味するもので、それを獅子が退治することで、無病息災を願うというストーリーになっているのです。 地域に祭りがあり、若者がそれを盛り上げているところには活気があります。地方の人口減少で祭り自体が減ってきている中、「湯田川温泉神楽」はここ湯田川温泉に暮らす人にも、訪れる人にも活気を与えてくれる存在となっています。湯田川温泉の湯も魅力ですが、この「湯田川温泉神楽」を一度は見ていただきたいと思います。
- 2023.04.06
- 湯田川春風アート散歩開催4/7~5/20
- 日 時: 令和5年4月7日(金)~5月20日(土) 会 場: 湯田川温泉内 (鶴岡市湯田川) 「開催内容」 〇アートによって現された女神をめぐり、湯田川の文化に触れる小さな旅 湯田川温泉にある「由豆佐売(ゆずさめ)神社」は守り神である泉源の女神「溝樴姫命(ミゾクイヒメノミコト)」を祀る社。神社へ続く参道には、古くから妊婦の乳の出を願う信仰の対象になっていた県指定天然記念物「乳イチョウ」があります。 「湯田川温泉のものがたり」を伝えるために、この歴史と物語を軸である「女神」をアート作品で表現し、湯田川温泉のすばらしさを伝えるきっかけを作り出します。アートによって造られた多種多様な「女神」は可視化されることにより、楽しくなり、興味を持ってもらえます。その結果、来訪者に対して情報としては素通りされがちな湯田川温泉の歴史と成り立ちについての情報をインプットする大きな機会となります。また、地域内外からも減りつつある神社への参拝や樹木園に対して人が通うことで地域内に活気を取り戻すため行う初めての取り組みです。 【作品のご紹介】 Mao Simmons 入浴の女神=自由の女神 BORZOI 湯田川に古来から棲む女神様。竹ロケットに乗って温泉の安全を見回る。ふくよかな体つきは豊かさの象徴。お多福なお顔は幸せをもたらす。訪れた人々はこの女神様を見てこう言うのだ。「あの木製の女神様、お前のカァチャンにソックリじゃね?」と。 すずきまき その神社には、女神がいるという。 柔らかな風が吹き抜けて かすめる花の香り 光る小さな命 こだまする音色 ほんの些細な瞬間の縁に 現れてはまた消えてゆく ーーEmma "あ、今ここにいた"と思えるような空気の漂い、佇まいを表現しました。Emma(エマ)は架空の女神の名でありゲルマン語で宇宙の意味。また絵馬でもあり、ここにいてほしいと願うものです。 Joe Igarashi 「chatGPT」にて溝樴姫命を「Midjourney」でうまく出力されるようなプロンプトを作成。 出力したものをモニターで表示し、それをカメラで撮影をしています。 現代の神のような存在とも言えるAIを用いて、 神という概念をphotographで表現してみました。 外部環境によって作品の見え方が変わるので、 時間帯を変えたり、角度を変えたりしながら作品を御覧ください。 lovefurniture 湯田川の温泉街に 視覚作品を1つ増やしました。 湯田川温泉街をお散歩している自身の感覚を楽しんでください。 lovfurnitureより愛を込めて。 是非、ゆっくり湯田川で散歩をしてみては~